川尻善昭ミッドナイトフェス:トークショーメモ
12 16, 2014
(注)トーク風にまとめてしまいましたが基本的にメモを参照しており抜け・事実誤認など多数有ると思いますので、あくまでも「こんな雰囲気のトークショーだった」と言う程度の物ですが、よろしければ。(虫プロ時代の話やバンパイアハンターDなどもう少し詳しく話されてましたがメモし忘れました 汗)なお、権利的に問題等がある場合は @boketa まですぐに連絡していただければ、と思います。
川尻=川尻善昭 箕輪=箕輪豊 氷川=氷川竜介
2014.12.6
川尻監督に対する思い
氷川:川尻さんを最初に意識したのは『エースをねらえ!』(1973-1974)のEDなんですよ。ああいう少女漫画とか。他には『夏への扉』(1981)の画面構成とか。
川尻:『夏への扉』は少女漫画の雰囲気を任されたね。一本まるまる自分のカラーにして、楽しかった。
箕輪:僕にとっては『レディ・ジョージィ』(1983-1984)のOPとか『浮浪雲』(1982)とかですね。女児アニメというか。
氷川:じゃあ『妖獣都市』(1987)を監督されたのは意外で…
箕輪:いや、むしろ流れの中にあるのかと。
氷川:あ、なるほど。中心にある「ロマンチシズム」で繋がってるんですね。
SF新世紀レンズマン(1984)
氷川:レンズマンで初監督をされましたが…
川尻:絵を描くのが速かったんですよ。だから速くコンテが描けるやつということで、現場監督的な立ち位置で。音響は一切関わってないです。もう一人の監督の、富沢和雄さんが全体の監督といった感じで。だから僕の中ではあれは監督作ではないです。
迷宮物語「走る男」(1987)
川尻:あれ最初はりんたろうさん、大友(克洋)さんと押井(守)さんでやる予定だったんです。それで押井さんがダメになって、急遽僕がやることになって。
氷川:イメージボードとかはコンテを描く前に描かれたんですか?
川尻:レースのアイデアと一緒だからそうだね。最初は断ったんだよ。丸山(正雄)さんがやってくれと言うから…でも眉村さんのショートシートとか読みまくったけどやりたいのがなかなか出てこなくて。そこで丸山さんに相談したら「どんなのやりたい?」って聞かれて。それでああなったんです。
氷川:ああいうスタイルになったのは?
川尻:引き算だね。りんさんは福島(敦子)くんでああいうテイストのものをやって、大友さんはディティールをたっぷり入れたアニメをやって、その二人と違うものをやろうとしたらああなった。とにかく予算があったんだよ。後にも先にもあんなに時間と金があったのはあれだけ(笑)だから動かしまくった。編集やら音響やらはりんさんに任せちゃったね。
箕輪:なんか当時聞いた話だと透過光処理のためにJセルまで使ったとか…
川尻:タイムシートが凄かったね。
箕輪:当時のマッド(ハウス)のタイムシートってGセルくらいまでしかなかったんですよ。だから特別にタイムシートを作ったとか…
川尻:そう、当時って今と違ってセルだからたくさん重ねると色が違っちゃうんだよね。でもウォルター・ヒルの『ザ・ドライバー』(1978)の光の使い方が印象的で、それをやりたかった。作ってだいぶたってから、これはアメリカのイベントの時かな。真偽は不明なんだけど「マイケル・ジャクソンがMVを作って欲しいと言ってる」と。結局マッドにも僕の方にも話は来なかったけど、来たらぜひやりたかったね。
妖獣都市(1987)
川尻:もう運命的な出会いですね。OVA自体が日本のみの特殊な文化だと思います。大人になってもアニメ観るってことですから。実は監督のお話を頂くまで菊地さんの原作を読んだことなかったんですが、原作を読んで「山田風太郎の世界を同世代の人がこういう形で書いてる!」って思いました。同じ物を見て育ってるんですよ、で「素材としても同じ物が好き」と。山田さんの「子供が観ちゃ行けない世界」を再現しようと思いました。
箕輪:でも子供のころ思い出すと、昔の映画って結構女性の裸が出てたり、あんなテイストなんです。だから僕にとっては向こう側の世界って感じがしなかった。
川尻:これが初めて最後までつきあった作品だね。いまだから話すけど音響監督がいなかったんだよ。んで、僕も音響なんか素人だから用語が分かんないし、身振り手振りで必死に伝えました。収録も、屋良さんはそこそこ若いけど、藤田さんなんか大ベテランで。このとき、率先して現場を仕切って僕の意図を伝えてくださったのが永井一郎さんなんです。
箕輪:この話、この前の阿佐ヶ谷のイベントの打ち上げで聞いたんですよ、お客さんの前で話せたら良かったのに(笑)
氷川:今回話せたと言うことで(笑)
川尻:んで、ダビングの時も前日に初めて東海林さんの音楽テープを貰ったんだよ。聞く暇ないよ(笑)更に効果の人がアニメ初めてで。
氷川:大変ですよね、頭がぱかっと割れるシーンの音とか全然わからない。
川尻:そう。『遊星からの物体X』(1982)観たことありますか、って聞いても、ない。仕方ないから僕の家まで戻ってビデオ取ってきて聴いて貰って。あとは銃の音で『ブレードランナー』(1982)のブラスターの音みたいのを入れたかったけど、それも観たことがないと。だからまた取りに行って。あの銃の音だけで6時間くらいかかってます。
箕輪:でもなによりも恐ろしいのは、その作業で「あの作品」になることですよ。信じられない。まさに川尻マジックです。
氷川:それにしても、ラストを純愛に落とし込むのが感動的ですよね。
川尻:キレイなフィルムにしたかったね。最初の予定だとラストは教会を出る二人で終えようと思ってたけど、やっぱ非日常に回帰させたくて最後少し足した。
箕輪:会うまではもっと怖い人かと思ってたけど、ロマンチストなんです。
川尻:そんな怖くないでしょ(笑)
氷川:シナリオは80分のものを作ったんですか?
川尻:いや、シナリオは35分で、コンテも35分版を作った。書き直す時間が無くて、セリフだけメモ用紙に書いて挟んで、プロデューサーに見せた。で、いきなりコンテ。
箕輪:いい時代ですよね。
川尻:いや、時代の問題じゃないよ、あんなのマッドハウスでしか通用しない(笑)だって丸山さんが「80分にしたから、予算とか決めないとマッド(ハウス)は年越せないぞ」とか言ってくるんだもん(笑)
川尻さんと箕輪さんの出会い
川尻:『ロードス島戦記』(1990-1991)で箕輪の絵を見た。次は自分より巧い人に作監を任せたいな、と思ってた。何人か候補は居たけど結局箕輪に声かけた。
箕輪:ある日突然丸山さんから話があって。ロードス部屋に川尻さんが来たんです。ロードスには川尻さん以外にも兼森(義則)さんとかめちゃくちゃ巧い人が居て。『獣兵衛忍風帖』(1993)はネタとしてもやりたかった。川尻さんと会ったときはカチンカチンに緊張してました。
獣兵衛忍風帖BURST(2012)
川尻:ちょっとしたプロモみたいなのをまたやりたいね、って話から。本当は忍法ものは劇場作品じゃないと…時間も予算も無いところでやったからね。基本的にセリフなしで行くことにしてたんだけどSEと息芝居は入れたいと思って。声優雇えないなら「俺、練習してくるから!」と言って(笑)そしたら三間(雅文)さんが「学校出たての子を使おう」って言って。そしたら、たまたま音響スタジオの中を山寺(宏一)さんが通りかかって。で、獣兵衛の息だけ入れて貰った。
箕輪:この作品、川尻さん全原画とか語るとこ一番有るんですけど、いちばんの見所は山寺宏一の無駄遣い(笑)「ハッ!」とか「うっ!」とか山寺さんが言って、それに三間さんがリテイク出すんですよ。
川尻:作品自体の源流は『伊賀の影丸』だね。伊賀の影丸経由で山田風太郎。
箕輪:この作品、バックストーリー聴くとなるほどってなるんですよ。最後の人間バイクのお兄ちゃんは、誰か偉い人から聞いて勝手に勘違いして自分でバイクも何も全部作っちゃってとか…でも3分だと(笑)
川尻:原画は全部俺だね。一本一ヶ月。
箕輪:それでキャラ修したんだけど誰もいなくて寂しかった。
獣兵衛忍風帖(1993)
氷川:今日海外版のブルーレイ持ってきたんですけど、これって海外だと凄い人気なんですよね。『Ninja Scroll』って名前で。最近アニメ関係で新聞とかの取材を受けることがあるんですがそのとき絶対『獣兵衛忍風帖』観てるか聴いてるんです。これを観なきゃダメだ、と。大体の人は知らないんですけど。最近の通過儀礼です。
日本人にしか作れないアニメですよね。
川尻:これは、今だったらやれるかも知れないと思って企画書を書いた作品。んでしばらくたったら突然丸山さんから「やることになったから」って事務報告された。意識したのは、構図的にわかりやすい作品。
箕輪:構成としてはスパイ映画ですよね。アバンタイトルでまずアクションがあって。
川尻:時代劇って「今」のお客さんが観られるようなものが少なくなってきたんですよ、映画のテンポが速くなり出した頃で。だからこの作品はノンストップアクションで見せきろう、と。冒頭の獣兵衛は放り投げるおにぎりは『ダーティーハリー』(1971)のホットドッグ。
箕輪:最初はテンポ速いと思ったんですよ、だって敵が8人でしょ。だったら一人10分くらいじゃないですか。海外ではそれが受けたのかなって。
川尻:とにかく刺激的に、そしてエスカレートしていくようにって作ったね。人体真っ二つとか、出来るだけ派手に。
箕輪:『マトリックス』(1999)のとき、ウォシャウスキー兄弟が好きな日本のアニメを聴かれて「AKIRA,GHOST in the SHELL」とか言ってるのは通訳したのに「Ninja Scroll」は無視したんですよ!あの通訳者は一生許せないですね(笑) この作品、ロードスの後なので髪の毛は全部BL塗りつぶしにハイライトだけにして。
川尻:髪の毛BL塗りつぶしにハイライトってのは、時代劇の髪の質感を狙ってやった。
箕輪:当時のマッドハウスって撮影室にネコが居たんで、撮影の時のゴミが酷くて(笑)
川尻:昔のフィルムなら映らなかったけどだんだん性能が上がってゴミが目につくようになった(笑)ブルーレイにするならどうやってフィルムの空気感を出すかなんだけど、『獣兵衛』のブルーレイはゴミを消しつつフィルム感も残ってて良かったよ。 『バンパイアハンターD』(2001)はフィルムが最高の作品だね。池畑祐治さんの美術はもう国宝級だし。これってほぼ全部セル作品なんだよ。ほとんど最後の時代じゃないかな。実はテレビのモニターじゃ分からないような処理を入れてるんだよ。 この作品ってバンパイアは鏡に映らないって設定なんだけど、Dは半分人間半分吸血鬼のダンピールだから鏡に映るとき特殊な処理をしてる。
箕輪:具体的に言ってしまえば、黒い物を透けさせてるんです。
氷川:テレビだとそれは映らないですね。
箕輪:個人的にも35mmフィルムは楽しみですね。
川尻:正直普段はこの時間もう寝てるんだけど(笑)この時間から三本はしんどいけど、
「面白いから寝させねえぞ!」(会場拍手)
川尻=川尻善昭 箕輪=箕輪豊 氷川=氷川竜介
2014.12.6
川尻監督に対する思い
氷川:川尻さんを最初に意識したのは『エースをねらえ!』(1973-1974)のEDなんですよ。ああいう少女漫画とか。他には『夏への扉』(1981)の画面構成とか。
川尻:『夏への扉』は少女漫画の雰囲気を任されたね。一本まるまる自分のカラーにして、楽しかった。
箕輪:僕にとっては『レディ・ジョージィ』(1983-1984)のOPとか『浮浪雲』(1982)とかですね。女児アニメというか。
氷川:じゃあ『妖獣都市』(1987)を監督されたのは意外で…
箕輪:いや、むしろ流れの中にあるのかと。
氷川:あ、なるほど。中心にある「ロマンチシズム」で繋がってるんですね。
SF新世紀レンズマン(1984)
氷川:レンズマンで初監督をされましたが…
川尻:絵を描くのが速かったんですよ。だから速くコンテが描けるやつということで、現場監督的な立ち位置で。音響は一切関わってないです。もう一人の監督の、富沢和雄さんが全体の監督といった感じで。だから僕の中ではあれは監督作ではないです。
迷宮物語「走る男」(1987)
川尻:あれ最初はりんたろうさん、大友(克洋)さんと押井(守)さんでやる予定だったんです。それで押井さんがダメになって、急遽僕がやることになって。
氷川:イメージボードとかはコンテを描く前に描かれたんですか?
川尻:レースのアイデアと一緒だからそうだね。最初は断ったんだよ。丸山(正雄)さんがやってくれと言うから…でも眉村さんのショートシートとか読みまくったけどやりたいのがなかなか出てこなくて。そこで丸山さんに相談したら「どんなのやりたい?」って聞かれて。それでああなったんです。
氷川:ああいうスタイルになったのは?
川尻:引き算だね。りんさんは福島(敦子)くんでああいうテイストのものをやって、大友さんはディティールをたっぷり入れたアニメをやって、その二人と違うものをやろうとしたらああなった。とにかく予算があったんだよ。後にも先にもあんなに時間と金があったのはあれだけ(笑)だから動かしまくった。編集やら音響やらはりんさんに任せちゃったね。
箕輪:なんか当時聞いた話だと透過光処理のためにJセルまで使ったとか…
川尻:タイムシートが凄かったね。
箕輪:当時のマッド(ハウス)のタイムシートってGセルくらいまでしかなかったんですよ。だから特別にタイムシートを作ったとか…
川尻:そう、当時って今と違ってセルだからたくさん重ねると色が違っちゃうんだよね。でもウォルター・ヒルの『ザ・ドライバー』(1978)の光の使い方が印象的で、それをやりたかった。作ってだいぶたってから、これはアメリカのイベントの時かな。真偽は不明なんだけど「マイケル・ジャクソンがMVを作って欲しいと言ってる」と。結局マッドにも僕の方にも話は来なかったけど、来たらぜひやりたかったね。
妖獣都市(1987)
川尻:もう運命的な出会いですね。OVA自体が日本のみの特殊な文化だと思います。大人になってもアニメ観るってことですから。実は監督のお話を頂くまで菊地さんの原作を読んだことなかったんですが、原作を読んで「山田風太郎の世界を同世代の人がこういう形で書いてる!」って思いました。同じ物を見て育ってるんですよ、で「素材としても同じ物が好き」と。山田さんの「子供が観ちゃ行けない世界」を再現しようと思いました。
箕輪:でも子供のころ思い出すと、昔の映画って結構女性の裸が出てたり、あんなテイストなんです。だから僕にとっては向こう側の世界って感じがしなかった。
川尻:これが初めて最後までつきあった作品だね。いまだから話すけど音響監督がいなかったんだよ。んで、僕も音響なんか素人だから用語が分かんないし、身振り手振りで必死に伝えました。収録も、屋良さんはそこそこ若いけど、藤田さんなんか大ベテランで。このとき、率先して現場を仕切って僕の意図を伝えてくださったのが永井一郎さんなんです。
箕輪:この話、この前の阿佐ヶ谷のイベントの打ち上げで聞いたんですよ、お客さんの前で話せたら良かったのに(笑)
氷川:今回話せたと言うことで(笑)
川尻:んで、ダビングの時も前日に初めて東海林さんの音楽テープを貰ったんだよ。聞く暇ないよ(笑)更に効果の人がアニメ初めてで。
氷川:大変ですよね、頭がぱかっと割れるシーンの音とか全然わからない。
川尻:そう。『遊星からの物体X』(1982)観たことありますか、って聞いても、ない。仕方ないから僕の家まで戻ってビデオ取ってきて聴いて貰って。あとは銃の音で『ブレードランナー』(1982)のブラスターの音みたいのを入れたかったけど、それも観たことがないと。だからまた取りに行って。あの銃の音だけで6時間くらいかかってます。
箕輪:でもなによりも恐ろしいのは、その作業で「あの作品」になることですよ。信じられない。まさに川尻マジックです。
氷川:それにしても、ラストを純愛に落とし込むのが感動的ですよね。
川尻:キレイなフィルムにしたかったね。最初の予定だとラストは教会を出る二人で終えようと思ってたけど、やっぱ非日常に回帰させたくて最後少し足した。
箕輪:会うまではもっと怖い人かと思ってたけど、ロマンチストなんです。
川尻:そんな怖くないでしょ(笑)
氷川:シナリオは80分のものを作ったんですか?
川尻:いや、シナリオは35分で、コンテも35分版を作った。書き直す時間が無くて、セリフだけメモ用紙に書いて挟んで、プロデューサーに見せた。で、いきなりコンテ。
箕輪:いい時代ですよね。
川尻:いや、時代の問題じゃないよ、あんなのマッドハウスでしか通用しない(笑)だって丸山さんが「80分にしたから、予算とか決めないとマッド(ハウス)は年越せないぞ」とか言ってくるんだもん(笑)
川尻さんと箕輪さんの出会い
川尻:『ロードス島戦記』(1990-1991)で箕輪の絵を見た。次は自分より巧い人に作監を任せたいな、と思ってた。何人か候補は居たけど結局箕輪に声かけた。
箕輪:ある日突然丸山さんから話があって。ロードス部屋に川尻さんが来たんです。ロードスには川尻さん以外にも兼森(義則)さんとかめちゃくちゃ巧い人が居て。『獣兵衛忍風帖』(1993)はネタとしてもやりたかった。川尻さんと会ったときはカチンカチンに緊張してました。
獣兵衛忍風帖BURST(2012)
川尻:ちょっとしたプロモみたいなのをまたやりたいね、って話から。本当は忍法ものは劇場作品じゃないと…時間も予算も無いところでやったからね。基本的にセリフなしで行くことにしてたんだけどSEと息芝居は入れたいと思って。声優雇えないなら「俺、練習してくるから!」と言って(笑)そしたら三間(雅文)さんが「学校出たての子を使おう」って言って。そしたら、たまたま音響スタジオの中を山寺(宏一)さんが通りかかって。で、獣兵衛の息だけ入れて貰った。
箕輪:この作品、川尻さん全原画とか語るとこ一番有るんですけど、いちばんの見所は山寺宏一の無駄遣い(笑)「ハッ!」とか「うっ!」とか山寺さんが言って、それに三間さんがリテイク出すんですよ。
川尻:作品自体の源流は『伊賀の影丸』だね。伊賀の影丸経由で山田風太郎。
箕輪:この作品、バックストーリー聴くとなるほどってなるんですよ。最後の人間バイクのお兄ちゃんは、誰か偉い人から聞いて勝手に勘違いして自分でバイクも何も全部作っちゃってとか…でも3分だと(笑)
川尻:原画は全部俺だね。一本一ヶ月。
箕輪:それでキャラ修したんだけど誰もいなくて寂しかった。
獣兵衛忍風帖(1993)
氷川:今日海外版のブルーレイ持ってきたんですけど、これって海外だと凄い人気なんですよね。『Ninja Scroll』って名前で。最近アニメ関係で新聞とかの取材を受けることがあるんですがそのとき絶対『獣兵衛忍風帖』観てるか聴いてるんです。これを観なきゃダメだ、と。大体の人は知らないんですけど。最近の通過儀礼です。
日本人にしか作れないアニメですよね。
川尻:これは、今だったらやれるかも知れないと思って企画書を書いた作品。んでしばらくたったら突然丸山さんから「やることになったから」って事務報告された。意識したのは、構図的にわかりやすい作品。
箕輪:構成としてはスパイ映画ですよね。アバンタイトルでまずアクションがあって。
川尻:時代劇って「今」のお客さんが観られるようなものが少なくなってきたんですよ、映画のテンポが速くなり出した頃で。だからこの作品はノンストップアクションで見せきろう、と。冒頭の獣兵衛は放り投げるおにぎりは『ダーティーハリー』(1971)のホットドッグ。
箕輪:最初はテンポ速いと思ったんですよ、だって敵が8人でしょ。だったら一人10分くらいじゃないですか。海外ではそれが受けたのかなって。
川尻:とにかく刺激的に、そしてエスカレートしていくようにって作ったね。人体真っ二つとか、出来るだけ派手に。
箕輪:『マトリックス』(1999)のとき、ウォシャウスキー兄弟が好きな日本のアニメを聴かれて「AKIRA,GHOST in the SHELL」とか言ってるのは通訳したのに「Ninja Scroll」は無視したんですよ!あの通訳者は一生許せないですね(笑) この作品、ロードスの後なので髪の毛は全部BL塗りつぶしにハイライトだけにして。
川尻:髪の毛BL塗りつぶしにハイライトってのは、時代劇の髪の質感を狙ってやった。
箕輪:当時のマッドハウスって撮影室にネコが居たんで、撮影の時のゴミが酷くて(笑)
川尻:昔のフィルムなら映らなかったけどだんだん性能が上がってゴミが目につくようになった(笑)ブルーレイにするならどうやってフィルムの空気感を出すかなんだけど、『獣兵衛』のブルーレイはゴミを消しつつフィルム感も残ってて良かったよ。 『バンパイアハンターD』(2001)はフィルムが最高の作品だね。池畑祐治さんの美術はもう国宝級だし。これってほぼ全部セル作品なんだよ。ほとんど最後の時代じゃないかな。実はテレビのモニターじゃ分からないような処理を入れてるんだよ。 この作品ってバンパイアは鏡に映らないって設定なんだけど、Dは半分人間半分吸血鬼のダンピールだから鏡に映るとき特殊な処理をしてる。
箕輪:具体的に言ってしまえば、黒い物を透けさせてるんです。
氷川:テレビだとそれは映らないですね。
箕輪:個人的にも35mmフィルムは楽しみですね。
川尻:正直普段はこの時間もう寝てるんだけど(笑)この時間から三本はしんどいけど、
「面白いから寝させねえぞ!」(会場拍手)