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ブックレビュー「MM9-Invasion-」「海の底」

08 23, 2011
今回は装いを変えて二つの小説を比較しながら簡単なレビューを書こうと思う。

「MM9-invasion-」は山本弘による、気象庁特異生物対策課(=気特対)の活躍を描く怪獣SFシリーズ「MM9」シリーズの第二弾。前回が短編読み切りスタイルだったのに対し今回は宇宙生物の来襲を描く長編。(ちなみに現在第三弾「MM9-destruction-」が連載中)
一方「海の底」はエビ状の謎の甲殻類の来襲を受けた横須賀を舞台としたパニックSF小説。作者は「図書館戦争」などヒット作を連発しているヒットメーカー・有川浩。

 今回この二編をぶっ続けで読んで、特に考えてしまったのは作者の世代の差である。山本弘は1956年生まれ、俗に言う「オタク第一世代」ないし「ウルトラマン世代」。それに対し有川浩は1972年生まれ、つまり1980年代の「怪獣特撮冬の時代」に10代を送っている。はっきりいってこれだけでもうこの二つの小説の方向性の違いは説明できてしまう。「MM9」シリーズは怪獣の出現とそれに対応する人々の活躍、つまり怪獣スペクタクルを中心に描くのに対し、「海の底」は怪獣描写は割と疎か(失礼!)で、機動隊や明石、烏丸といった警察組織を中心としたドラマにかなりのウェイトが置かれている。(その証拠に怪獣との接触が全くない潜水艦内の描写にかなりの枚数が割かれている)
 ここにはっきり二人の怪獣に対する思い入れの差が如実に出ている。山本弘は当然ウルトラマンないしゴジラの影響下にあり(なぜ昭和ガメラでないのかについての説明は面倒なので省く)そこを発想の出発点として描いている(と、本人も公言している)。一方有川浩は「海の底」において「平成ガメラ」シリーズを参考にしたという。平成ガメラシリーズは金子修介監督、伊藤和典脚本による傑作怪獣SFシリーズであるが、それまでの怪獣映画のお約束をことごとく無視し、徹底的にリアリズムを追求しており怪獣映画としてはかなり異端な存在である。「平成ガメラ」を前提として作品を書いたということは結果的に当然怪獣物のセオリーからかなり外れる、例えば「なんの疑問もなく防衛軍が出動する」といったことがない(=自衛隊は閣議決定後出動なので怪獣災害を食い止められない)、ということになる。もっと言えば有川氏自身はミリタリーおよびポリティカルな展開は描きたくても怪獣にはそれほど興味がない、物語の推進剤としての「かませ犬」として登場させたのではないかという勘繰りまでしてしまう。...というのはさすがに筆者に失礼だし、作中に「ゴジラ」に絡ませる描写がわざわざ出て来たりして有川氏がまったく怪獣映画の基礎知識がない状態でこの作品を作り上げたとは口が滑っても言えないけれど。

 ただ、群体生物の襲撃、なかなか(というか最終盤まで)出動しない自衛隊、民間人が怪獣の謎を解き明かす、などあまりにも「ガメラ2 レギオン襲来」(および「ガメラ 大怪獣空中決戦」の自衛隊描写)に似たガジェットが多いと思ってしまったのもまた事実である。まあこの作品のメインターゲット年代(がどの年代なのかなんて知らないが)の人は自分みたいな「怪獣者」以外は殆ど気付かないだろうから特に問題はないのだけれど。

 最期に、怪獣SFということから離れてちょこっとだけ感想を書いておこう。まず「MM9-invasion-」であるが前作が純粋なSF小説だったのに対し今回はベタベタの恋愛物の要素が絡んでくる。個人的にはこうした展開は嫌いでないけれどこの描写は作品の評価を大きく分けるだろうな、というかAmazonでは評価が大きく割れていた。一方「海の底」だけれどこちらもベタベタの恋愛描写があるけれどこの小説のテイスト(というより有川浩の味?)とは大きく外れない。むしろ残念なのは怪獣対策と潜水艦内の描写がまったくリンクせずバラバラに進行してしまうこと。たとえ主人公が部署とか役職を超えて活躍するのは全くの大嘘だとしてもメインプロットが二つになるように書いてしまうのはマズい気がする。あとマスコミ描写が雑。3.11後に見ると余計に雑。
 

 「MM9-invasion-」の感想が殆どなくなってしまった。けどまあいいか、「海の底」のがメジャーだし色々思うことは多かったから。これは決して「MM9」シリーズが駄作ということでは決してなく、僕にとってはむしろ、久々に血湧き胸躍る怪獣SFの大傑作で続刊が非常に楽しみなのだ。(ちなみに「MM9」は文庫版よりハードカバー版のが表紙がかっこいい)
 「海の底」についても割と批判が目立ってしまったけれどポリティカル・ミリタリー描写については一切の手抜きがなくゲーム的感覚でテンポよく事件が推移していくのは面白く、一気に読み切ってしまった。

まあ共に多少の綻びはあるもののなかなか現代の小説にはない味わいで面白く読ませていただきました。現在は今年7月に逝去された小松左京氏の「継ぐのは誰か?」を読んでおります。もしかしたらこれもレビューを書くかも。

P.S.小松左京が怪獣SF物を書いてたらなあ、と思わずにはいられない今日この頃。きっとあの凄まじい情報量で怪獣に立ち向かう人々の熱い物語を展開させていたに違いない。

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