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『悪の教典』

11 30, 2012
2012年 製作=東宝,電通,文藝春秋,OLM,A-team,日本出版販売 制作プロダクション=東宝映画、OLM 配給=東宝
原作:貴志祐介
脚本・監督:三池祟史
出演:伊藤英明、染谷将太、二階堂ふみ、吹越満 ほか

2011年の「このミステリーがすごい!大賞」をはじめとした各賞を受賞した貴志祐介の同名小説を映画化した本作。東宝配給作品としては『告白』以来2年ぶりのR-15指定作品(しかも製作委員会幹事で直接制作も行っている)で、個人的には『告白』を割りと気に入っていたので、サイコパスを描いたこの作品は果たしてどうなのか期待して観た。

前半は至って普通の学園ドラマの延長線的なストーリーで、ところどころ蓮実の行動がおかしい部分があるが、まあ撮り方もスタンダードで特に意外性はない。強いていえば人物同士の関係性が明らかになる。そしてテストでカンニング防止のために妨害電波が流される辺りから中盤へ。
ここから少しずつおかしくなっていく。クラスの女子の家が火事で全焼、吹越満演じる根性の曲がった教師が蓮実を疑っていることが明らかになり、同時に染谷将太らが徐々に疑念を強めていき、そしてクラスで蓼沼が問題を起こしたその日の夜に行方不明になる。そして、核心に迫った吹越満と染谷将太が蓮実に殺害される辺りからいよいよ物語は完全に学園ドラマという枠を超えて、サイコキラー映画としての凶暴な性格を見せていく。
染谷を運ぶ軽トラの俯瞰映像に突如右手から侵入してくる男、そして回想場面はそれまでロングショットを比較的多用していたのとは対照的に極めて箱庭的な世界の中で展開していく。(特に、蓮実が相棒を焼き殺す場面の箱庭感はすばらしい!)そして、ミヤの殺害を決行した直後に別のクラスの女子が現れ、犯行隠蔽が困難になり、そのまま散弾銃による大量殺戮(ないし蹂躙・虐殺、といったところか)へとつながっていくが、確かに山田孝之の死に様は笑えるし、「マック・ザ・ナイフ」が流れる中で丹念に一人ずつを撃ち殺していく屋上前階段のシーンはまさに「カ・イ・カ・ン」だし(笑)、アーチェリーとの対決があっさり決着がつくシーンなどは定石外しの楽しさに溢れているが、殺害方法がひとつというのはやや単調(これは『アウトレイジビヨンド』や『アウトレイジ』後半でも感じた問題だ)。また、岡本喜八が「アクションはアタック&カウンターで作っていく」という言葉を少し思い出してしまったのだが、生徒側の反撃が少なすぎるのもやや残念。

ところで、感じたことを少し雑感として記しておくと、とにかく「動」と「静」の対比ということが気になった。映画全体で言えば前半の「静かな」展開に比べ終盤は怒涛の展開を迎える。また走って金きり声を上げて走って逃げる生徒をほとんど動かずに撃ち殺す蓮実、そして生徒の大半が殺されて「動かなく」なっていく中でモリタートを吹きつつ、積極的に動き回っていく、という風に変化していく。また、主観と客観というのは『告白』、さらに振り返れば『ユージュアル・サスペクツ』でも問題になったが、今作でも猟銃についた目や最終盤の二階堂ふみのカラスのようなにごった目は単に蓮実の幻覚なのか、なにかしらの意図の下の映像なのか判断し辛い。
それにしてもtwitterでも書いたが「THE WORLD IS YOURS」とは恐れ入った。やはりこれは三池版『スカーフェイス』なのだろうか。個人的には『野獣死すべし』(原作版)に近い匂いを感じたが...

後半の大量殺戮場面にはやや不満が残るものの、こういった作品がエンターテインメント映画として成立するあたり、日本映画界も捨てたものではない、と切に感じた一本だった。
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