2012年 極私的映画ランキング
01 01, 2013
2012年映画ランキング
新作篇トップ5
①『わが母の記』(監督=原田眞人)
②『アルゴ』(監督=ベン・アフレック)
③『黄金を抱いて翔べ』(監督=井筒和幸)
④『おだやかな日常』(監督=内田伸暉)
⑤『虹色ほたる~永遠の夏休み~』(監督=宇田鋼之介)
次点『のぼうの城』(監督=犬童一心・樋口真嗣)『鍵泥棒のメソッド』(監督=内田けんじ)『桐島、部活やめるってよ』(監督=吉田八大)
総評:
今年話題になった作品で、ランクから漏れたのは『キツツキと雨』『アウトレイジビヨンド』『最強のふたり』『天地明察』『終の信託』『北のカナリアたち』『あなたへ』『おおかみこどもの雨と雪』『ももへの手紙』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』、未見作品の『夢売るふたり』『ヘルタースケルター』『苦役列車』『PlayBack』『レ・ミゼラブル』『007/スカイフォール』など。洋画は鑑賞本数がそもそも少ないので何も言えないが、邦画に関して言えばベテラン監督がやや精彩を欠いた印象がある。特に降旗康男の『あなたへ』はかなり痛々しい作品で高倉健の存在感が逆に作品の流れを阻害するという結果を生み出してしまっている。一方で若手~中堅監督の作品に光るものが多くそういった意味では2013年以降も彼らの動きには要注目だ。
各評:
次点に三本も入れるのはやり過ぎだと思いつつ、どうしてもそれぞれ多少なりとも瑕のある作品であり、一方でおもしろさに関しては甲乙つけがたい。『のぼうの城』はそれまでの樋口作品に見られた「くどさ」が緩和され、良質のエンターテインメントになっていたが榮倉奈々演じる姫の立ち位置がイマイチなのと、水攻め以降の若干のテンポの悪さが目についた。『鍵泥棒のメソッド』は快テンポの詐欺コメディ映画(『スティング』とかあの類だ)だが、ややメロドラマ寄りの作品になりすぎた感はある(特に広末涼子まわりの内容があまり充実していない)。『桐島~』は間違いなく2012年の映画批評界ではベスト級の扱いを受けるだろうし、自分も見た順番によってはランクインさせていたかもしれない。しかしながら、自分としては「映画の特権化」という藤井仁子の言葉が引っかかりランクインさせることを躊躇った。
さて、上位5本はどれもあまりヒットしていない(①除く)作品たちなので感想を一言ずつに留め、とにかく見てほしいと思う。
⑤は今年公開のアニメーション映画では間違いなくベストであり、未来へのまなざしはどの作品よりも明確だった。
④は原発を舞台にしているように見えるが実際はすれ違い映画の系譜ともいえる新しい映画。
③はとにかく井筒らしいアクション映画だ。
②は有無を言わせず必見の大傑作。
①はバタくささが目につきがちな原田眞人が一皮むけたウェルメイドな一本。
ランク外の作品についてもう少し。そこそこの評価は受けているようだが『アウトレイジビヨンド』は悪い意味で小さくまとまっており評価し難い。『終の信託』はフジテレビの宣伝が悪い面も多分にあるがやはり前半が長すぎる。『北のカナリアたち』はミステリーとしてはかなり悲惨な出来だった。『おおかみこども』『ヱヴァ:Q』に関してはまだ困惑しており評価が全く定まらない。理由は述べないが、ランク外からあえて一本サルベージするとすれば『GOTHICMADE:花の詩女』(監督=永野護)を挙げよう。おすすめはしない。
旧作邦画篇トップ10(順不同・年代順)
『鴛鴦歌合戦』(1939年・監督=マキノ正博)
『しとやかな獣』(1962年・監督=川島雄三)
『乱れる』(1964年・監督=成瀬巳喜男)
『博奕打ち・総長賭博』(1968年・監督=山下耕作)
『御用金』(1969年・監督=五社英雄)
『顔役』(1971年・監督=勝新太郎)
『実録・私設銀座警察』(1973年・監督=佐藤純弥)
『北陸代理戦争』(1977年・監督=深作欣二)
『雪の断章-情熱-』(1985年・監督=相米慎二)
『3-4x 10月』(1990年・監督=北野武)
次点『(ハル)』(1996年・監督=森田芳光)『徳川一族の崩壊』(1980年・監督=山下耕作)『冬の華』(1979年・監督=降旗康男)
感想:
すでに評価が固まっている作品も多いので順不同で印象的だった作品をリストアップ。ランクインしていない作品でも『黒蜥蜴』や『桜の代紋』などが印象に残った。上から順に一言感想。『鴛鴦歌合戦』は瞠目するほどすばらしきオペレッタ映画。『しとやかな獣』はとにかく会話劇の妙を堪能。『乱れる』は想定外の加山雄三の好演。『博奕打ち・総長賭博』はやっぱり鶴田浩二がいい。『御用金』、五社演出は多少くどいがそれがいい方向に出たのが本作だと思う。『顔役』は映画をここまで破壊するかと驚嘆。『実録・私設銀座警察』今年のオールタイムベスト級の怪作、神波史男さんの仕事の中でも悪魔的魅力を放つ。『北陸代理戦争』最後まで深作演出は快調であった。『雪の断章』心に大きなしこりを残すアイドル映画、相米演出のドライブ感は凄い。『3-4x 10月』個人的にはいままで見たタケシ映画で一番面白かった。次点の3本は思いつくのが遅かっただけでトップテンと遜色ない作品。何本かは現在視聴が大変な作品もあるがぜひ見てほしい。
(本当はロマンポルノ作品と堀川弘通作品を一本くらい入れたかったが泣く泣くこんな感じに。あえて一本ずつ挙げるとすれば『ラスト・キャバレー』と『青い野獣』ということになる。)
最後に:
2012年はおそらく過去最高の年間鑑賞本数180本(劇場80本,DVD・テレビ100本)という中だったので選考次点で今までよりも遙かに充実していた。名画座がいくつか閉館するという悲しい事態も発生しており、フィルムからデジタルへ、という流れはもはや止めようもなくなってきているが、今年も少しでも多く劇場で映画をたくさん見られれば、と思う。
改めて、本年もよろしくお願いいたします。
新作篇トップ5
①『わが母の記』(監督=原田眞人)
②『アルゴ』(監督=ベン・アフレック)
③『黄金を抱いて翔べ』(監督=井筒和幸)
④『おだやかな日常』(監督=内田伸暉)
⑤『虹色ほたる~永遠の夏休み~』(監督=宇田鋼之介)
次点『のぼうの城』(監督=犬童一心・樋口真嗣)『鍵泥棒のメソッド』(監督=内田けんじ)『桐島、部活やめるってよ』(監督=吉田八大)
総評:
今年話題になった作品で、ランクから漏れたのは『キツツキと雨』『アウトレイジビヨンド』『最強のふたり』『天地明察』『終の信託』『北のカナリアたち』『あなたへ』『おおかみこどもの雨と雪』『ももへの手紙』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』、未見作品の『夢売るふたり』『ヘルタースケルター』『苦役列車』『PlayBack』『レ・ミゼラブル』『007/スカイフォール』など。洋画は鑑賞本数がそもそも少ないので何も言えないが、邦画に関して言えばベテラン監督がやや精彩を欠いた印象がある。特に降旗康男の『あなたへ』はかなり痛々しい作品で高倉健の存在感が逆に作品の流れを阻害するという結果を生み出してしまっている。一方で若手~中堅監督の作品に光るものが多くそういった意味では2013年以降も彼らの動きには要注目だ。
各評:
次点に三本も入れるのはやり過ぎだと思いつつ、どうしてもそれぞれ多少なりとも瑕のある作品であり、一方でおもしろさに関しては甲乙つけがたい。『のぼうの城』はそれまでの樋口作品に見られた「くどさ」が緩和され、良質のエンターテインメントになっていたが榮倉奈々演じる姫の立ち位置がイマイチなのと、水攻め以降の若干のテンポの悪さが目についた。『鍵泥棒のメソッド』は快テンポの詐欺コメディ映画(『スティング』とかあの類だ)だが、ややメロドラマ寄りの作品になりすぎた感はある(特に広末涼子まわりの内容があまり充実していない)。『桐島~』は間違いなく2012年の映画批評界ではベスト級の扱いを受けるだろうし、自分も見た順番によってはランクインさせていたかもしれない。しかしながら、自分としては「映画の特権化」という藤井仁子の言葉が引っかかりランクインさせることを躊躇った。
さて、上位5本はどれもあまりヒットしていない(①除く)作品たちなので感想を一言ずつに留め、とにかく見てほしいと思う。
⑤は今年公開のアニメーション映画では間違いなくベストであり、未来へのまなざしはどの作品よりも明確だった。
④は原発を舞台にしているように見えるが実際はすれ違い映画の系譜ともいえる新しい映画。
③はとにかく井筒らしいアクション映画だ。
②は有無を言わせず必見の大傑作。
①はバタくささが目につきがちな原田眞人が一皮むけたウェルメイドな一本。
ランク外の作品についてもう少し。そこそこの評価は受けているようだが『アウトレイジビヨンド』は悪い意味で小さくまとまっており評価し難い。『終の信託』はフジテレビの宣伝が悪い面も多分にあるがやはり前半が長すぎる。『北のカナリアたち』はミステリーとしてはかなり悲惨な出来だった。『おおかみこども』『ヱヴァ:Q』に関してはまだ困惑しており評価が全く定まらない。理由は述べないが、ランク外からあえて一本サルベージするとすれば『GOTHICMADE:花の詩女』(監督=永野護)を挙げよう。おすすめはしない。
旧作邦画篇トップ10(順不同・年代順)
『鴛鴦歌合戦』(1939年・監督=マキノ正博)
『しとやかな獣』(1962年・監督=川島雄三)
『乱れる』(1964年・監督=成瀬巳喜男)
『博奕打ち・総長賭博』(1968年・監督=山下耕作)
『御用金』(1969年・監督=五社英雄)
『顔役』(1971年・監督=勝新太郎)
『実録・私設銀座警察』(1973年・監督=佐藤純弥)
『北陸代理戦争』(1977年・監督=深作欣二)
『雪の断章-情熱-』(1985年・監督=相米慎二)
『3-4x 10月』(1990年・監督=北野武)
次点『(ハル)』(1996年・監督=森田芳光)『徳川一族の崩壊』(1980年・監督=山下耕作)『冬の華』(1979年・監督=降旗康男)
感想:
すでに評価が固まっている作品も多いので順不同で印象的だった作品をリストアップ。ランクインしていない作品でも『黒蜥蜴』や『桜の代紋』などが印象に残った。上から順に一言感想。『鴛鴦歌合戦』は瞠目するほどすばらしきオペレッタ映画。『しとやかな獣』はとにかく会話劇の妙を堪能。『乱れる』は想定外の加山雄三の好演。『博奕打ち・総長賭博』はやっぱり鶴田浩二がいい。『御用金』、五社演出は多少くどいがそれがいい方向に出たのが本作だと思う。『顔役』は映画をここまで破壊するかと驚嘆。『実録・私設銀座警察』今年のオールタイムベスト級の怪作、神波史男さんの仕事の中でも悪魔的魅力を放つ。『北陸代理戦争』最後まで深作演出は快調であった。『雪の断章』心に大きなしこりを残すアイドル映画、相米演出のドライブ感は凄い。『3-4x 10月』個人的にはいままで見たタケシ映画で一番面白かった。次点の3本は思いつくのが遅かっただけでトップテンと遜色ない作品。何本かは現在視聴が大変な作品もあるがぜひ見てほしい。
(本当はロマンポルノ作品と堀川弘通作品を一本くらい入れたかったが泣く泣くこんな感じに。あえて一本ずつ挙げるとすれば『ラスト・キャバレー』と『青い野獣』ということになる。)
最後に:
2012年はおそらく過去最高の年間鑑賞本数180本(劇場80本,DVD・テレビ100本)という中だったので選考次点で今までよりも遙かに充実していた。名画座がいくつか閉館するという悲しい事態も発生しており、フィルムからデジタルへ、という流れはもはや止めようもなくなってきているが、今年も少しでも多く劇場で映画をたくさん見られれば、と思う。
改めて、本年もよろしくお願いいたします。